top of page
執筆者の写真いえ

家コラム #作家

更新日:2021年12月17日

ローラ・インガルス・ワインダーのより良い暮らし

 




 


 広大な草原にぽつんと家がひとつ。まわりには誰ひとり住んでいない。そこにあるのはインガルス一家の暮らしだけ。お日様が沈めば辺りは真っ暗。電線なんてどこにもないから、暗くなったらランプを灯す。たまに狼もくるし、インディアンだってくる。隠れるところも、逃げ込むところも家しかない。つまり、家に鍵をかけて身を守るのだ。

 トイレだって自前だし、水だって沢からひく。料理だって薪でするし、寒い冬を乗り越えるのに暖炉は欠かせない。吹き荒れる嵐や吹雪も情け容赦なく家を揺さぶる。雨風をしのぎ、暑さ寒さを耐え、大地を耕しながら家族で明るく日々を積み重ねていく。大草原では家はシェルターだった。そう、ローラ・インガルス・ワイルダーは『大草原の小さな家』を書いた作家である。


 彼女自身の幼い頃の体験を描いた自伝的小説で、アメリカ開拓民の暮らしぶりやインガル 一家の日常の中にある家族の絆に引き込まれてしまう魅力がある。彼女の一連のシリーズのタイトルには、大きな森、草原、プラム・クリークの土手やシルバー・レイクの岸辺など、住まいの場所がつけられている。インガルス一家は住処を転々としながら、良い土地を探す開拓民なのだ。より良い暮らしを求めて移動し、そしてそこで住まいをつくっていく。開拓者たちのエネルギーには度肝を抜かれるが、たとえ住む場所や環境が変わっても、そこにはいつも変わらず温かなインガルス一家らしい暮らしが立ち上がってくる。


 作家として活躍していた娘ローズに勧められて50歳を過ぎてから書き上げた一連の作品には、彼女に染み付いていた幼い頃の生活体験が滲み出てくるように書かれている。そして、それは家族との思い出とともに、場所の記憶と結びついているのだ。



WRITER 

藤田進(ふじたすすむ)

(有)札幌第一こどものとも社 / 取締役。20代から庭と、こどもと、絵本にとりつかれ、いまだその間を行ったり来たりしている。学生時代は旅人に憧れながらも、土から離れられない農民になり、鶏や豚や植物たちと一緒に過ごす。その後、札幌に戻り、絵本とおもちゃ屋になりました。


閲覧数:18回0件のコメント

最新記事

すべて表示

Comments


Commenting has been turned off.
bottom of page