大切な相棒
私の職場は徒歩30秒の牧場です。牛の世話をしています。通勤時間がとても短いので、昼食も家で食べるし、休憩も家で。事務仕事もするので家にいる時間がとても多いです。小さい頃から農家になりたいと思っていた私は、おのずと多くの時間を過ごす家への興味を深めて行きます。どんなインテリアだと気持ちがいいんだろう。床材や壁はどんな素材がいいだろう..。
一昨年、家を建てました。自分の好きが詰まった家に住めている充足感は何にも変えがたいと改めて思っています。テーブルや椅子、床は手足に触れる場所なので天然素材でとても気持ちがよく、デザインは古くならないシンプルなデザインを選びました。照明は光を包みこむもので暖色系を。外見は板張りで屋根は低く、周囲の自然環境に馴染むデザインにできました。家という暮らしのベースができたので、今の興味は周りにある草花をシンプルに挿せる一輪挿しや家庭菜園で取れる野菜や自家産の牛肉料理を盛れる器などに移っています。自分の農的暮らしを重層的に深められる家を作れた事は本当に良かったと思っています。
農作業は屋外の作業が多く、体を動かすのでとても気持ちがいい反面、夏の暑さや冬の寒さ、力仕事で体力を消耗する事もあります。家の中は断熱と気密性の高さで常に穏やかな空気が流れており、疲れた体をいつも包んでくれます。夏は涼しく、冬暖かい。子供たちも風邪をひきにくくなりました。自然環境の厳しさから身を守ってくれる家があると、厳しさの反面産み出してくれる、自然の豊かさや美しさを家族で享受しやすくなるとも感じています。厳冬期に美しい景色と薪ストーブの炎を見ながら暖かい飲み物を飲んでいると何物にも変えがたい豊かさを感じます。
家は私にとって大切な相棒です。窓枠をマメに塗料を塗ったり、メンテナンスをして長く付き合っていけるようにしていきたいと思っています。
WRITER
菅野義樹(かんのよしき)
学校職員として酪農の実習助手を担当。その後海外で持続可能な畜産を学ぶ。実家に戻り農業をしていたところ、東日本大震災そして原発事故によって避難。3年前に北海道、栗山町で牧場を再開。現在は牧場の基盤作りと多くの人に牧場を体験してもらえる仕組みを構築中。
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